パターン別 脱サラ・退職

脱サラ・退職ルート:辞める前の準備から1年目の確定申告まで

ひとことで言うと

会社を辞めて開業する人は、①辞める前に生活費と保険の準備、②辞めたら14日以内に健康保険と年金、③失業手当をもらうなら事業の準備を始める前にハローワークへ、の順に進めます。住民税と保険料は前年の所得で決まるので、1年目は支払いが重くなりがちです。

最終確認日:

ポンちゃん
会社を辞めるときは、税金・保険・年金の手続きがいっぺんに来るよ。順番どおりに1マスずつ進めば大丈夫!

脱サラルートは6マス

  1. 1辞める前に準備する生活費の貯え、審査もの、健康保険の比較、辞める日の決め方。
  2. 2退職日に書類を受け取る源泉徴収票や離職票など、あとの手続きで使う書類をそろえます。
  3. 314日以内に保険と年金国民健康保険か任意継続か、家族の扶養かを選び、国民年金に切り替えます。
  4. 4失業手当と開業の順番を決める事業の準備を始める前に、ハローワークで相談します。
  5. 5開業届と青色申告開業日を決めて、開業届と青色申告承認申請書をセットで出します。
  6. 61年目のお金と確定申告前年の所得で決まる住民税と保険料に備え、翌年は給与もあわせて申告します。

1. 辞める前(会社員のうち)にやっておくこと

生活費を貯えておく

独立してすぐは、売上が入るまで時間がかかることがあります。しかも住民税と国民健康保険料は前年(会社員時代)の所得で決まるので、収入が減っても支払いは減りません(下で解説)。生活費の何か月分を用意するか、先に決めておきましょう。

審査ものは会社員のうちに

独立した直後は収入の実績が少ないため、クレジットカードやローン、賃貸住宅の審査で不利になることがあります。仕事用のカードなど、必要になりそうなものは辞める前に検討しておくと安心です。

お金の準備へ →

健康保険の見込み額を聞いておく

国民健康保険料は市区町村で、任意継続の保険料は会社の健康保険(協会けんぽ・健康保険組合)で、前もって見込みを聞けます。どちらが安いかは人によって違います。

会社の確定拠出年金があるか確認

会社の確定拠出年金(企業型DC)に入っている人は、会社を辞めて加入者でなくなってから6か月以内に、iDeCoなどへ移す手続きをする。

手続きをしないと国民年金基金連合会に自動で移され、運用されないまま手数料がかかり、その期間は加入期間に数えられません(受け取れる年齢が遅くなることがあります)。

辞める日で変わること

辞める月によって、住民税の納め方が変わります。1月〜5月に辞めた人は、5月分までの残りを最後の給料などからまとめて引かれる(一括徴収)。6月〜12月に辞めた人は、まとめて引いてもらうか、自宅に届く納付書で自分で納める(普通徴収)かを選べる。

1月〜5月に辞める残りの住民税がまとめて引かれる

5月分までが最後の給料などから一括で引かれるので、最後の手取りが少なくなります。

6月〜12月に辞める納め方を選べる

まとめて引いてもらうか、自宅に届く納付書で、年4回などに分けて自分で納めるかを選べます。

根拠は地方税法第321条の5第2項。最後の給料で引ききれないときは、残りの分の納付書が自宅に届きます。

2. 退職日までに受け取る・出す書類

  • 源泉徴収票翌年の確定申告で、会社の給与もあわせて申告するのに使います。
  • 離職票失業手当の手続きや、国民年金保険料の特例免除の申請に使います(失業手当をもらわない人も、もらっておくと安心です)。
  • 健康保険の資格喪失を確認できる書類国民健康保険に入るときに求められることがあります。何が必要か、市区町村に確認を。
  • 退職所得の受給に関する申告書(会社に出す)退職金がある人は、退職前に会社に出しておきます。くわしくは下で。

退職金がある人は、会社に「退職所得の受給に関する申告書」を出しましょう。会社にこの申告書を出せば、退職金から正しい税額が引かれるので、原則として確定申告はいらない。出さないと支払額の20.42%が引かれ、確定申告で精算する。

カタカタ
退職金には、勤めた年数に応じた大きな控除があるんだ。申告書を出しておけば、計算は会社がやってくれるよ。

3. 辞めた日の翌日から14日以内に、保険と年金

会社の健康保険と厚生年金から外れるので、自分で切り替えます。手続きはお住まいの市区町村の窓口です。

国民健康保険に入る

会社の健康保険の資格がなくなった日(退職日の翌日)から14日以内。

会社の健康保険を続ける(任意継続)

退職日の翌日から20日以内に申し出れば、最長2年間続けられる(退職日まで2か月以上続けて加入していた人)

協会けんぽの場合。会社が負担していた分も自分で払うので、保険料は原則として在職中の2倍になります(上限あり)。健康保険組合の場合は組合に確認してください。

家族の扶養に入る

収入の見込みなどの条件があります。開業して収入が増えると外れることもあるので、家族の勤め先の健康保険に確認を。

年金は、退職日の翌日から14日以内に国民年金(第1号被保険者)に切り替えます。あなたに扶養されていた配偶者がいる場合は、その人の切り替えも必要です。

届出が遅れても、保険料は退職日の翌日までさかのぼって払うことになります。その間の医療費は、特別な理由がない限り全額自己負担です。

保険料が払えないときの制度

国民年金の特例免除

失業したことを確認できれば、前年の所得にかかわらず、保険料の免除や納付猶予を受けられることがある。

申請には雇用保険被保険者離職票のコピーなどが必要です。免除された期間は、将来の年金額が少なくなります。

国民健康保険料の軽減

倒産・解雇・雇い止めなどで辞めた人は、前年の給与所得を30/100として保険料を計算する(離職日の翌日の月から、翌年度末まで)。

雇用保険の特定受給資格者・特定理由離職者が対象で、自己都合で辞めた人は対象外です。申請は市区町村へ。

4. 失業手当と開業の順番を決める

失業手当(雇用保険の基本手当)は、次の仕事を探している人のための手当です。事業を始めたり、事業の準備に入ったりすると、原則として受け取れなくなります。開業すると決めているなら、ハローワークで先に相談しましょう。

自己都合で辞めた人には、手当が出ない「給付制限」の期間があります。2025年4月1日以後に辞めた人は原則1か月(待期7日のあと)。5年以内に自己都合で2回以上受給資格決定を受けていると3か月です。

再就職手当

事業を始めた場合も、待期が過ぎてから開始し、支給残日数が3分の1以上あるなどの条件を満たせば対象になることがある。

事業の開始日(準備期間があれば準備を始めた日)の前日までに失業の認定を受けている必要があります。自己都合で辞めて給付制限がある人は、待期が終わってから1か月の間に事業(準備)を始めると対象外です。条件はほかにもあるので、ハローワークで確認を。

受給期間の特例

離職後に事業を始めた人は、申請すれば最長3年、失業手当の受給期間に算入しない扱いにできる(事業開始等の翌日から2か月以内に申請)。

あとで事業をやめて再就職活動するときに、失業手当を受け取れる余地を残す制度です。

ポンちゃん
「いつから準備を始めたか」で結果が変わるよ。開業届を出す前、名刺やサイトを作りはじめる前に相談してね!

5. 開業届と青色申告をセットで出す

開業日を決めたら、開業届と青色申告承認申請書を税務署に出します。開業届の期限は事業を始めた年の確定申告期限までですが、青色申告の申請は青色申告をしたい年の3月15日まで(1月16日以後に開業した場合は、開業日から2か月以内)と短めなので、いっしょに出すのが安心です。

辞める前から準備で使ったお金(開業のための広告や市場調査、打ち合わせの交通費など)は「開業費」として経費にできることがあります。レシートはとっておきましょう。

届出の出し方は「届け出る」マスへ →

6. 1年目のお金と、翌年の確定申告

辞めた次の年は、税金と保険料が重く感じやすい年です。どちらも前年の所得で計算される。会社を辞めて収入が減っても、辞めた翌年度までは会社員時代の所得をもとに納めるからです。

翌年2月16日〜3月15日の確定申告では、開業してからの事業の所得に加えて、辞めた会社の給与(源泉徴収票の金額)もあわせて申告します。年の途中で辞めて年末調整を受けていないので、給与から引かれた所得税を納めすぎていれば、ここで戻ってきます。

開業して確定申告をする人は、会社の源泉徴収票の給与もいっしょに申告書に書きます。退職金について「退職所得の受給に関する申告書」を出していれば、退職金は原則として申告しなくてかまいません。

カタカタ
1年目は、住民税と国民健康保険料の通知が来る6月ごろに支払いが集中しがち。最初の売上から、税金用のお金を分けておくと安心だよ。

脱サラルートのチェックリスト

  • 生活費の貯えと、審査ものの準備をした
  • 健康保険の見込み額をくらべ、辞める日を決めた
  • 源泉徴収票と離職票を受け取った(退職金がある人は申告書を出した)
  • 14日以内に健康保険と年金を切り替えた(任意継続は20日以内)
  • 失業手当をもらうなら、事業の準備を始める前にハローワークに相談した
  • 企業型DCがある人は、6か月以内にiDeCoなどへ移した
  • 開業届と青色申告承認申請書をセットで出した
  • 翌年の確定申告で、会社の給与もあわせて申告する
ポンちゃん
次は「届け出る」マスで、開業届と青色申告の出し方を見てみよう!